蕎麦店開業の

参考書

【第一回】「一匠庵」と「十割蕎麦」のご紹介

始めに

 この文章は蕎麦に興味のある方、そして将来蕎麦店を開業したいと思っている方に向け、当社の「一匠庵」のご紹介をするとともに、蕎麦店を開くにあたって最低限身に付けていただきたいことを、参考書形式でまとめ上げたものです。実際に「日本蕎麦街道 一匠庵」を開店させた筆者の経験と視点をもとに、料理としての蕎麦の詳細、そして蕎麦店の経営について詳しく解説していく内容になってい
ます。これが蕎麦店の開業を目指す方々への参考となれば幸いです。
 「日本蕎麦街道」は宮城県大河原町に本社を置く蕎麦専門の製麺機メーカーです。そして「一匠庵」は日本蕎麦街道が運営している蕎麦専門店であり、現在は大河原本店のほかに、七ヶ浜町にフランチャイズの「一匠庵七ヶ浜店かみ村(2022年11月現在)」があります。

 

最新の機械製麺による十割蕎麦

 「一匠庵」の大きな特徴は機械を使った「十割」での製麺を行っていることです。これまでの蕎麦に対する一般的なイメージとしては、手打ちの十割が最上であり、機械打ちはその下に見られがちでしたが、決してそんなことはありません。蕎麦の製麺機の進化は著しく、当社で開発した技術とノウハウにより、機械打ちでも十分においしい十割蕎麦ができるようになっており、それはお店の蕎麦を食べていただければわかっていただけるかと思います。その辺りの詳細とノウハウについては改めて詳しく述べる予定です。
 また「一匠庵」ではつなぎの小麦を使用しておらず、天ぷらの衣も蕎麦粉にして、グルテンフリーに挑戦しています。小麦アレルギーのある方に対しての対策なども、ご評価いただければと思っています。

 

一匠庵の「天盛りそば」

 

機械製麺の大きなメリット

 ご存知の通り、これまで手で蕎麦を打つのは職人の仕事であり、一定程度の修業と経験を積まなければできないものでした。そして重労働のため、長い期間蕎麦打ちをしていると、腰や体に大きな負担がかかっていました。現在の少子高齢化社会の中では、蕎麦店の開業にあたってその点が大きなハードルになっていると思います。
 しかし蕎麦打ちを機械化することにより、高齢の方や経験のないアルバイトの方でも、修業する必要なく蕎麦が打て、しかも機械の技術革新により、これまで職人でも難しいとされていた十割の蕎麦が、全く遜色なく作れるようになりました。また時間がかからないので、朝早く起きて蕎麦打ちをする必要もなくなりました。

 

一匠庵大河原本店

 

よりおいしい蕎麦への追及

 蕎麦打ちを機械化、省力化することで人件費のコストが削減できたため、「一匠庵」では通常の価格で「蕎麦のお替り自由」という、これまでにはなかったメニューシステムを取り入れています。同時にその分のコストをもとに、蕎麦粉や蕎麦つゆの材料をできるだけ吟味し、お客様が満足できる「おいしい蕎麦」の追及に努めています。

 

変わりつつある日本食の職人文化

 最近は海外の寿司ブームのおかげで、寿司職人の人材が大量に海外へ流出しているとのことです。そして東京のすし職人養成講座などでは、海外で寿司職人になりたい人たちであふれんばかりと聞いております。職人の価値が高まり、日本の賃金の十倍ともいわれる海外で花開こうとしていることは、賃金の低い日本からの脱出であり、時代の変化を感じさせるところでもあります。さらに円安ドル高の現在(2022年11月現在)では、外国人の日本爆買いが、職人の世界まで迫ってきているのは少々ショッキングなところでもあります。しかも中国系、韓国系の経営者たちが見よう見まねで日本食ブームを作っているという、心底笑えない話でもあるのです。

蕎麦の海外進出について

 寿司と同じく従来の蕎麦も職人が支えてきた日本伝統の文化でもあるにもかかわらず、蕎麦は未だに海外進出を果たせていません。蕎麦は海外に進出する最後の日本食文化ではないでしょうか。
 しかし蕎麦の海外展開については、ともすれば蕎麦の「なんちゃって文化」が中途半端に市場に出てしまいそうな恐れがあります。乾麺の蕎麦と出来合いの濃縮汁では、本当の味を知らない外国人には受け入れられても、日本人には受け入れてもらえないと思います。

 

店内の様子
 
当社のノウハウの全てをご紹介

 そうした日本古来の食文化のひとつでもある蕎麦について、日本国内はもちろんのこと、海外で蕎麦を理解してもらえるかをも含めて、今後掘り下げていきたいと思っています。
 またこの連載では、当社が開発した機械製麺機「そば達人」や、機械ミキサー「仕込み達人」を駆使した、これまでにない蕎麦店経営のすべてをお話しするつもりです。ありがたいことに「一匠庵」は多くのお客様の支持をいただき、連日順調な状況が続いています。この文章ではその内情をも暴露するつもりで執筆する予定です。読者の皆さんの考え方と違ったこともあろうかと思いますが、一部年金生活に突入した老人のつぶやきと聞き流す程度に、どうぞお付き合いくださいませ。

 

 

 

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文・日本蕎麦街道代表 本木拓也

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